亥の子餅を作ってみました

亥の子とは最近耳慣れない言葉になっていますが、旧暦10月亥の日に餅、又はぼた餅を食す習慣のことで、この日に食べる餅を「亥の子餅」と呼び「玄猪(げんちょ)」「亥の日の祝」「亥の子餅の祝」としてまつります。主に西日本に多い風習です。

古来の亥の子餅は、小さく俵状に形造った餅に大豆(きなこ)、小豆、大角豆、胡麻、栗、柿、糖の7種を混ぜた粉をまぶして五色にしたもの。または白、黒、赤の三色に色付けしたものと考えられますが地域差があり定かではないようです。

和菓子屋さんでもこの時期に亥の子餅として販売しているお店が少ないので、三色の亥の子餅を作ってみることにしました。

材料

  • だんご粉 又は 上新粉
  • きなこ
  • すり黒ゴマ
  • さらしあん
  • 砂糖(きなこ・すりごま黒に混ぜておきます)

工程

だんご粉
市販の団子粉、又は上新粉を用意します。
団子粉をこねる様子
水を少しづつ足して全体になじむように練りこみます
塊になるように練りこみます。
俵状に形を整えます。俵の形が瓜坊(イノシシの子供)に似ているからという意味です

この後はだんご粉の場合は①熱湯の入った鍋に入れて5分ほど茹でる 上新粉の場合は②蒸してからさらに餅つきの要領で粘り気を出して、形を整えます。

私は手間のかかった分②の方がおいしいと思います。

塗す材料:赤「さらしあん」 黄色「きなこ」 黒「すりごま黒」
赤「さらしあん」 黄色「きなこ」 黒「すりごま黒」の三色を用意して、お団子に塗します。
さらしあん とは粉状の「あんこ」です
三色の亥の子餅
三色の亥の子餅が出来ました
一の亥の子 は「菊」を添えてお供えします。文献では忍(房の付いた組紐)も添えるようなのであるもので飾ってみました。
サンプル ↑

 

因みに、二の亥は忍緒と紅葉、三の亥は忍緒と銀杏を添えてお供えします。

10月は12日間に一回ずつ亥の子餅をつくるの!?

お団子つくりは子供たちが楽しそうにお手伝いしてくれます。自分たちで作った亥の子餅をお供えして、親戚や知人に配ったりしていると、この年中行事が家族の無病息災や繁栄を祈るためものであることに改めて気付かされてしまいます。是非、ご一緒にお子様のお名前を記した命名旗、名前旗を飾ってみてください。ご両親だけでなく子供達にもきっと心に残る思い出になることでしょう。

 

亥の子

亥の子とは

旧暦10月の10日(亥の日)は亥の子と呼ばれる収穫祭の意味合いを持つ行事です。別名「玄猪(げんちょ)」「亥の日の祝」「亥の子餅の祝」とも呼ばれ、関東では「十日夜(とおかんや)」ともいいます。「十月亥の日の亥の刻(21時-22時くらい)に餅を食べると病気にならない」という大陸の伝承が起源で、この日は田の神に「亥の子餅」をお供えして収穫への感謝、家族の無病息災いを祈りお祝いをします。

元は宮中の祭礼で、宮中では「御玄猪(おげんちょ)」といい、一の亥は忍(しのび:房付きの飾紐)と菊、二の亥は忍と紅葉、三の亥は忍と銀杏を添えて飾ります。京都の護王神社では亥の子餅つきの神事を再現した「おつき式」でついた亥の子餅を神前に供えると共に調貢行列(ちょうけんぎょうれつ)をつくって京都御所へ献上します。

亥の子餅のお供え
復元江戸生活図鑑 笠間良彦著 柏書房より

源氏物語にも登場してくる亥の子餅

亥の子餅は源氏物語にも登場します。光源氏が若紫と初枕を交わした次の朝が一の亥で、五色の亥の子餅を見た光源氏が乳母の子の惟光に、婚儀の三箇夜餅(みかよもち)もつくるようほのめかす場面です。亥の子餅自体の描写はありませんが、生活習慣として定着していて誰もが知っていることのように思われます。

庶民の亥の子

猪の多産にあやかり、子孫繁栄と無病息災を祈願する宮中行事でしたが、徳川幕府も行うようになったので武家でも祝うようになり、次第に庶民にひろまりました。農村ではちょうど稲刈りの時期にも重なるために次第に収穫祭としての意味合いが強くなっていったようです。

東日本では旧暦10月10日の夜に、藁を固く束ねた藁鉄砲(わらでっぽう)で地面を叩く風習があります。この日は豊穣を司る神様が山へ帰る日とされ、収穫への感謝と翌年の豊穣を願い餅や大根などの供物が捧げられます。藁鉄砲で地面を叩くことにより、畑を荒らすモグラを除き、大地の生産力を高める意味があるといいます。子供達が藁鉄砲で地面を叩きながら農家を回っていくと、先々でお菓子をもらえます。日本オリジナルのハロウィーンのようなものです。地域で子供達を大切にしているんですね。

炉開き

猪は火を防ぐ動物と考えられており、亥の子の日から炬燵(こたつ)や囲炉裏に火を入れ始めると火災にならないともいわれます。茶道では釜炊きを風炉から地炉にする時期で、新茶の封を切って茶席を設ける「茶人の正月」も亥の子にするものです。

亥の子の日の室礼

亥の子は「十五夜のお月見」「十三夜のお月見」と同様に収穫祭の意味合いがあります。子孫繁栄、子供の成長、家族の無病息災を祈る行事でもありますので、「亥の子餅」のお供えと一緒にお子様のお名前を記した命名旗や名前旗を一緒に飾ってみてはいかがでしょうか。

三方に載せた亥の子餅のお供えと一緒に家紋名前旗を飾りました。お子様の健やかなる成長を祈念する意味合いになります。